2025-08
技能実習生に役立つプラスチック成形ガイド

【成形不良の基礎 Vol.24】なぜ樹脂が途中で止まる?──ベント詰まりが招く“見えない壁”と排気設計の基本

樹脂の充填不足によって一部が欠けたショートショット不良の図 技能実習生に役立つプラスチック成形ガイド

樹脂が進まないのは「空気のせい」かもしれません

射出成形で発生する「一部が充填されない」「端部が欠ける」などの不良。多くの現場では「ショートショット(充填不足)」として処理されがちですが、実はそれが排気不良によって引き起こされているケースも少なくありません。

これは、金型内部に残った空気が排出されずに溜まり、それが“見えない壁”となって樹脂の流れを止めてしまう現象です。

Dalam proses injection molding, sering ditemukan cacat berupa bagian produk yang tidak terbentuk dengan sempurna. Banyak yang langsung menyimpulkan ini sebagai short shot. Namun, sebenarnya penyebabnya bisa jadi adalah ventilasi mold yang tersumbat.

ベントが詰まるとどうなるか?

金型には、溶融樹脂と一緒に押し出される空気を逃がすための**ベント(排気溝)**が設けられています。しかしこのベントが以下のような状態になると、不良の原因になります:

設計上、適切な位置に排気が設けられていない

樹脂が入り込んで詰まってしまっている

汚れや腐食で塞がれている

このような状態では、空気が抜けずに内部で圧縮され、樹脂の流れを妨げてしまいます。その結果、

製品の端部が欠ける

ボイドや気泡が生じる

ガス焼け(Diesel Burn)が発生する

ヒケやそりなど、間接的な寸法不良が出る

Jika vent tersumbat, maka:

Resin tidak mencapai ujung cavity

Terbentuk void atau gelembung

Terjadi gas burn akibat udara panas terperangkap

Muncul warpage atau sink mark karena pengisian tidak sempurna

ベント設計の基本:空気の“出口”を意識する

排気設計は、単なる“溝を彫る”作業ではありません。空気の流れを「最後まで通す」ことが重要です。以下のような設計が望まれます:

キャビティ末端に必ずベントを配置:樹脂が最終到達する箇所は空気が最後に溜まる場所です。

リブやボスの周囲にもベントを設ける:特に詰まりやすい狭小部位。

ベントの深さと幅:一般的には0.01~0.02mm程度で、ガスは抜けるが樹脂は漏れにくい形状に。

スライド部や可動構造周辺:クリアランスや隙間がベントの代替になることもある。

Desain ventilasi yang baik mencakup:

Penempatan vent di ujung aliran resin

Tambahan vent kecil di sekitar rib atau tonjolan

Lebar vent sekitar 0.01–0.02 mm untuk udara, tapi menahan resin

Celah ventilasi pada bagian slide

なぜベントは詰まるのか?そしてどう防ぐか?

ベントは常に使用環境にさらされるため、

樹脂の溢れ込み

加熱によるガス残渣の付着

金型の摩耗や変形

といった要因で徐々に詰まっていきます。そのため、定期的な清掃と点検が不可欠です。

推奨されるメンテナンス内容:

生産ロットごとのベントチェック(特にPOMやPVCなどガス発生が多い材料)

ベント専用クリーナーや防焼潤滑剤の使用

超音波洗浄やエアブローでのクリーニング

Alasan vent tersumbat:

Resin masuk ke dalam vent saat tekanan tinggi

Residu gas menempel di vent akibat pemanasan

Vent aus atau berubah bentuk

Langkah pencegahan:

Bersihkan vent setiap pergantian lot

Gunakan pelumas anti sticking atau cairan khusus vent

Lakukan ultrasonic cleaning secara berkala

現場教育の視点:「空気の動き」を意識させる

実習生や若手作業者は、「空気が邪魔をする」という発想を持ちにくい傾向があります。

教育では以下のアプローチが有効です:

成形シミュレーションを用いた樹脂と空気の“流れ方”の可視化

焼き付きやガス焼けが起きた部位とベント配置の関係性を実物で確認

詰まりを意識したベント溝の構造観察・実験

Dengan pelatihan yang tepat, peserta:

Memahami bagaimana udara dan resin bersirkulasi dalam mold

Mengenali lokasi cacat dan menghubungkannya dengan posisi vent

Mengamati bentuk vent dan mendeteksi potensi penyumbatan

応用に向けて:目に見えない“空気の壁”を設計で制御する

ベント不良による成形トラブルは、単なる不具合ではなく「設計者が空気の存在をどう扱ったか」が問われる問題です。

空気の動きは“見えない材料”と捉える

樹脂の流れと空気の排出を常にセットで考える

成形トラブルが起きたら、まず「空気の逃げ道はあったか?」を問い直す

排気設計・ベントのメンテナンス・作業者教育──この三本柱で、安定した品質と不良率の低減が実現できます。

▶ Vol.25では、ノズルから糸のように伸びる「糸引き不良」について、温度・速度・粘度の関係から詳しく解説します。

▶ Pada Vol.25, kami akan membahas tentang stringing — resin yang keluar seperti benang dari nozzle — dan bagaimana pengaturan suhu dan viskositas dapat mengatasinya.

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